±Days

そして終幕、の舞台袖




「というわけで、特に危機も盛り上がりも劇的な展開もなく救出劇は終わったわけだけど、満足? 妹ちゃん」

「ええ、この上なく」

「俺はつまんなかったけどー。今回動いたのが馬鹿中の馬鹿なのはわかってたけど、小物すぎてねぇ」

「あなたの退屈心を慰めるための催しじゃないですからね。小物の方が見せしめにちょうどいいでしょう」

「何気にブラック発言だー。……っていうか幼馴染くんたちはいいの? あっちはなんか感動のクライマックス的な感じになってるけど」

「ここであの子より私の方に先に来たら殴ってるところなので、これでいいんです」

「ま、あの子は完全に『巻き込まれた』わけだからね」

「ええ。それに、私の都合に付き合ってもらっちゃいましたし」

「って言っても、『安全第一』の計画だったんでしょー?」

「本当に『安全第一』なら、まず動かないでいるべきでしたけど。幸い、アクシデントもなく済みましたけど、何が起こるかはわからなかったですから」

「それこそ結果オーライだと思うけどなー。そもそも自分一人だったら、もっと安全マージンとらないで動いたでしょ、妹ちゃん」

「……まぁ、それは否定しません」

「妹ちゃんは本当、『守るもの』がある時の方が強い典型だよねぇ」

「買いかぶりすぎですよ」

「今の妹ちゃんがあるのも、幼馴染くんたちがあってのことだと考えると、買いかぶりでもないと思うけど?」

「…………」

「ま、そこはあんまりつつかないであげるけど。そうそう、帰る前に精密検査するから。拒否権はなしね」

「は? なんで精密検査なんか……」

「いつぞやの足の捻挫レベルなら妹ちゃんの意思を尊重してあげてもよかったけど、さすがに頭はねぇ」

「かすり傷ですってば」

「甘く見ちゃだめだよ妹ちゃん。それとも強制お姫さま抱っこで運ばれたい?」

「なんでそこでその選択肢。……まぁ、ひと段落したし別にいいですけど」

「お姫さま抱っこが?」

「わかってて言ってるでしょう。検査が、ですよ」

「あっはっはー、性分だから仕方ないねぇ。あ、心配しなくても深くんはラボに泊まり込みだし、今回の件は関知してないよ」

「でも、奏兄さんは知ってるんでしょう」

「そりゃあねぇ。一応俺、奏のオトモダチだし、大事な大事な妹ちゃんの近況は報告させてもらいましたよ?」

「いろいろ含みを感じますが、まあいいです。監禁にも軟禁にも発展しないような報告にしてくれたんでしょうし」

「見抜かれてるなー。ま、今回の件に関しては、基本妹ちゃんの味方だからね、俺。もうお役御免になるけど」

「そうですね。あなたとの取引だと、ここらが潮時でしょうね」

「ご期待に沿えましたか、依頼主サマ?」

「ええ、十分です。……ありがとうございました」

「やだなー、お礼は俺が完全に手を引くまで取っといてよ、照れちゃう☆」

「かわいこぶりっこは寒気がするのでやめてくださいって言いましたよね」

「うんうん、妹ちゃんはそんな感じに冷めた目で見てくれた方が落ち着くな〜」

「マゾ発言ですか?」

「お望みならレベル上げて言い直すけど?」

「望んでないです」

「新しい扉開いてくれたかと思ったのに、残念」

「そこで残念がらないでください。……ところでなんか全体的に大人しいですけど、悪いものでも食べたんですか」

「あれ? なに? 心配でもしてくれちゃった?」

「薄気味悪いだけです」

「辛辣ー。妹ちゃんも疲れてるだろうしあんまりちょっかい出さないようにって釘刺されちゃったから、ちょっと大人しめにしてみただけだよ」

「そういうこと言いそうなのは、――……三笠さんあたりですね」

「ご名答〜☆」

「でも疲れる類の言動は止める気ないんですね……」

「俺がストレスで死んじゃうかもだからねっ☆」

「だから、かわいこぶりっこはやめてください。キッツイですいろんな意味で」



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