±Days

『予想外のスキンシップにドキッ!』なイベントが起こったようです。




「どうしましょう」

「何が。っつーかいきなり現れての第一声がそれか」

「すみません、ちょっと動揺していまして」

「ああそう。別に聞きたくないけど聞いてやる。どうした」

「実は、さっき『彼女』と接触がありまして」

「まさかお前も目が合っただのなんだのじゃないだろうな」

「え、目ですか。合いましたけどそれが?」

「……いやいい。気にするな。お前がたかが目が合ったくらいで動揺するはずなかったな」

「自己完結されると気になるんですが。――というかそれ、ユズの話ですかもしかして」

「ご名答。よくわかったな」

「私たちの中で、目が合っただけで報告に来るようなのはユズくらいでしょう。レンリは微妙なところですが、あなたが呆れ気味だったので違うと判断したまでです」

「言われてみれば。で、あんたは何があったわけ」

「ついうっかりキスしてしまいました」

「――…よーし歯ァくいしばれ。オイタした野郎にはそれくらい当然だよな?」

「え、いやちょっと待ってください」

「誰が待つか。ああいや待ってやってもいい。その代り殴るのはユズにやってもらうか」

「あなた容赦する気ゼロですね!?」

「容赦する気があると思ったならそっちのが驚きだっての。うかつでアホでバカなことやらかした自覚があるなら大人しく殴られろ。あとはもう知らん」

「いや本当待ってください! キスって言っても口にじゃないですよ!!」

「じゃあどこにやったキリキリ答えろ」

「頬です親愛です決してやましい気持ちでやったわけじゃないんです!」

「その判断は前後関係わかってからじゃないと何とも。何がどうしてそんなことになったの」

「……ピアノ弾いてたんですよ」

「ピアノ?」

この学園うちの音楽室っていうのは複数あるんですが、そのうちの一つに音楽関係者垂涎のグランドピアノがありまして」

「まあカンナのとこだしそれはありそうだけど。それで?」

「たまに弾かせてもらってるんですよ。本来生徒用に開放しない部屋なんですが、カンナに頼んで」

「回りくどい。とっとと肝心のとこ話せ馬鹿」

「間違って迷い込んできた『彼女』があんまりにも無邪気に私のピアノを褒めたので嬉しくなって感謝を伝えようとしてうっかり」

「――前言ったよな? 日本じゃ基本的に親しくない人間からのスキンシップは好まれないって。そりゃもう何回も懇切丁寧に教えてやったよな?」

「……はい。覚えてます」

「なのになんでンなことやったわけ。家族間でやるのは構わないけど他はやめとけって忠告したよな?」

「浮かれてまして……すみません」

「謝る相手が違う。――あっちの反応はどうだったわけ? まあ最初のあんたの様子からして深刻なことにはなってないと思うけど」

「顔真っ赤にして走り去られました」

「だろうね。で、あんたは何に動揺したっての」

「あなたの忠告をうっかり忘れるくらい浮かれてしまった自分ですとか顔真っ赤にして涙目になってるの見てやってしまったと血の気がひいたのは確かなのに可愛いとかもっと見ていたいとか思ってしまった自分ですとかつまり自分が制御できてないことに驚いたというか何というか」

「……よしわかった、とりあえず脳内お花畑もとい頭の中がピンクなのは一人で充分だからそれ以上はやめろ。ネジどこに落っことしてきたんだこの馬鹿。あと頬染めるな気持ち悪い」

「……あなたのソレでちょっと落ち着きました。もう少しクールダウンしたいのでもう一度罵ってもらっていいですか――って痛っ!?」

「その発言がいろんな意味でアウトなことに気付いてない時点で落ち着けてないだろうがこの馬鹿。呆れるの通り越して鳥肌立ったんだけどもう放置していい?」

「すみません自力でクールダウンするので見捨てないでくださいお願いします」


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