±Days

彼女と彼の幕間/青空の下、イレギュラー発生。



「あっれー? 妹ちゃんどうしたのその格好」

「……」

「まるで上から降ってきたバケツの水を誰かをかばって被ったみたいな格好だね?」

「わかってて聞いてるんでしょうあなた。というかそこまで詳細に言うってことは見てましたね?」

「あははー。まあねぇ。あの場所一見死角っぽいんだけど、実は保健室から見えるんだよねー」

「それはそれは。相手方も結構間抜けですね。と言っても、見ていたのがあなたではあまり意味がないですが」

「ひどいなー妹ちゃん。それ暗に俺が役立たずだって言ってる?」

「そういうわけではないです。わかってるでしょう」

「まーとりあえず、保健室にご招待しますよオヒメサマ?」

「やめてください気色悪い」

「それでこそ妹ちゃんだよねー。とりあえず着替えあげるから入りなよ。ちなみに都合良く無人だから安心して?」

「本当に都合のいいことですね」

「そうだねー。これも俺の日頃の行いがいいからかなー」

「そうですね、ある意味ではイイ行いと言えなくもないですからね」

「あ、なんかすっごく含みを感じたなー。俺ってば超空気の読める気遣い屋さんだから傷ついちゃったなー。でもイイコだからタオルと替えの制服はプレゼントしちゃったりして?」

「明らかに棒読みじゃないですか。これくらいであなたが傷ついたら驚くのを通り越して天変地異を疑います。タオルと服はありがたくお借りしますけど」

「反応が深くんとそっくりで、言葉の選び方が奏と一緒だよね妹ちゃん。さすが家族」

「今のと比較できるという時点で、あなたの普段の言動がろくなものじゃないのがよくわかりますね」

「妹ちゃんが俺に対しての理解を深めてくれて嬉しいなっ」

「やめてください、っていうかその歳でかわいこぶりっこしないでください精神的ダメージが半端ないので」

「桂にはそんなこと言わないのにー」

「浅見さんは元々ああいう人だからいいんです。あなたは正真正銘作ってるじゃないですか」

「ええー? これが素かもしれないよ? だとしたら俺全否定だよ? ひどいなーひどいなー俺傷ついちゃうなー」

「そろそろうざいのでテンション落としてください。――っていうかなんで替えの下着まであるんです。セクハラですか訴えられたいんですか」

「やだな、あらゆる可能性に備えた結果だよ? ちなみにサイズがぴったりなのは奏の協力があったから。でも妹のあらゆるサイズ把握してる兄ってどうなの? 一般的に変態じゃないの?」

「あなた仮にも自分の友人を変態呼ばわりするのはどうなんです。……それに関しては浅見さん経由で筒抜けなんですよ。もう諦めました」

「あー桂ね。納得。そういえば原寸大の石膏像作っちゃうくらいだしねー。サイズ知るくらい朝飯前だったね」

「……なんでそのこと知ってるんです」

「ん? そのこと? なんのこと?」

「わかっててはぐらかさないでもらえますか。実物大石膏像のことです。アレについては作った本人ともらった当人しか知らないはずですが」

「あははーざんねーん。それプラス作り手から受け取り手に運んだ人も含んじゃうわけだよ。ほら何しろモノがモノだからさ、桂も珍しく頭働かせたみたいでね。わざわざ俺に依頼してきたワケ。――まあキミにとっては余計なお世話っていうか、いらない気を回してんじゃねぇ的なカンジかもだけど?」

「何も考えずに送ってうっかり壊れればよかったのにとは思いました今まさに」

「桂のアレはもう天然の域だから怒りのぶつけどころがなくて困るよねー。俺に八つ当たっちゃう? 妹ちゃんなら全然大歓迎だけど?」

「謹んで遠慮させていただきます」

「そんな一刀両断な妹ちゃんが好きだなー」

「私はあなたの言葉の薄っぺらさが嫌いですよ。――替えとタオル、ありがとうございました」

「いえいえ。キミとの取引外ではあるけど、一応奏からも頼まれてるしね。また何かあったらいつでもどうぞ?」

「今回は予定外です。そうそうそんな機会がないことを願いますよ」


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