±Days
現状を把握しましょう
「現状をきちんと把握できてる自信がある人、手ェ挙げて」
「……う。ええっと……」
「はい」
「……」
「…………」
「一人か。また随分と不甲斐ないことで」
「……面目ない」
「まあ全員が把握してたらしてたでびっくりだけど。ってわけでミスミ、あんたの目からみた今の状況は?」
「『過激派』登場、といったところでしょうか」
「ハイ正解。でも点数としては八十点ってとこかな」
「何が足りませんでしたか?」
「過激派もだけど、様子見組が動き出しちゃった感じ。実害は今のところないみたいだけど。あとはまあ別枠の方々が策を練ってるっぽい」
「それはまた――随分と動いたね。抑止力が抑止力として働かなくなってきたってこと?」
「まあそう考えるのが妥当だろうね」
「……抑止力ってナニ?」
「…………?」
「……。予想はしてたけどあんたら二人は天然の行動だったわけねアレ。まあ考えてやってるとは思わなかったけど。特にユズ」
「なんかよくわかんないけど貶されてるよね?!」
「いや感心してる。最善とは言わないけど最悪でもない行動だったわけだし」
「……。……もしかして」
「うん?」
「あの子に対する行動……のこと?」
「その通り。なんだレンリは完全に天然ってわけでもなかったのか」
「……?」
「なんでそこで首傾げるわけ。自分でわかんないの?」
「……多分、」
「……」
「……半分くらい、素?」
「なんで疑問符付くんだよとかそれ完全天然より微妙じゃないのとかつっこみたい気もするけどまあいいや。……要はあんたらの行動が抑止力になる期間は過ぎたみたいだからちょっと考えないとねってことだよ。わかった? ユズ」
「……た、多分?」
「ものすごく不安を煽るなその返答。まああんたは本能っていうか野生の勘的な何かでどうにかなりそうだからいいか」
「……それ、理解させる努力を放棄しただけじゃないの?」
「そうとも言う。っつーかそこまで面倒見てられるかっての。元はと言えばあんたらの問題なんだからおかしいよね普通に」
「それは否定しませんが、ユズが可哀想じゃないですか。仲間外れで」
「仲間外れは断定なのか。そっちのが酷いと思うけど」
「いやですね、比喩に決まってるじゃないですか」
「直喩表現なら『ような』を付けろ。ユズ本人に比喩って伝わってないから」
「……ミスミ、実はオレのこと嫌い……?」
「ほらマジ凹みしただろうが。不甲斐ない自分に腹立てるのはともかく周りに当たるな」
「……。お見通し、ですか」
「何年幼馴染やってると思ってる。……ほらユズ。そういうことだから落ち込まない。ミスミが八つ当たりするくらいには気ィ許してるってことなんだから」
「……え。そうなの?」
「――そうですよ。すみませんユズ。つい当たりました」
「……えーと、本気じゃなかったならオレはいいんだけど。そんなに今の状況ってヤバいの?」
「まあ、それなりには。実害出始めてるしね」
「え!? 実害って、なんかあったの!?」
「あったから言ってるんだっての。ミスミは現場に遭遇してたから気付いたんだろうし」
「ええ。話を聞いていたら何やら不自然だったので」
「なんかの補正でもかかってんじゃないのってレベルで居合わせたもんなおまえ。そのおかげで怪我の処置が早くできたのはあるにしろ」
「……怪我の処置と言えば」
「ん?」
「この間保健医が変わったのは知ってる?」
「知ってるけどそれが?」
「その経緯がちょっと不自然というか……気になって。今前後関係調べさせてるんだけど」
「……あー」
「もしかしたらその動きと関係あるかも――」
「ごめんそれ関係ない。あ、いや関係はあるけどカンナが考えてるようなのじゃない」
「……いやにハッキリ言うね?」
「あの人、奏兄さんの知り合いだから。ここに来た経緯がちょっとアレなのも仕様だから。そういう人だって納得しといて」
「……もしかして、君とも結構親しい人だったりする?」
「親しいか親しくないかでいったら多分前者だけどあんまり認めたくない感じの人種」
「また随分癖のありそうな……」
「なんていうか、奏さんの知り合いって感じだね!」
「……類は友を呼ぶ……?」
「あんたらが奏兄さんのことをどう思ってるのかよくわかる反応だな。否定はしないけど。身内から見てもちょっとアレなとこあるし。でも流石にあの人と一緒にされるのは複雑なんだけど」
「君がそこまで言う人間って相当だよね。ちょっとうちの人事が不安になってきたんだけど」
「人間性は限りなくアレだけど外面はいいから。少なくとも社会人としては真っ当に働くと思うから安心して」
「それで安心できるとしたら逆にすごいよね」
「否定はしない」
Copyright(c) 2012 Sou All rights reserved.